歴史を生きる

第三の意識状態の喪失
後アトランティスの諸時期を数千年遡るだけでも、人びとは多かれ少なかれ特異な見霊状態にありました。現在の私たちの物
質界に限定された覚醒状態と夢の曖昧な体験をも含めた睡眠状態との間に、当時の人びとは霊的現実に応じた第三の意識状
態を体験していたのです。
今日の神話学者たちが民族の想像力の産物として解釈しているものは、実際はこの古い見霊能力に由来するものなのです。
つまり霊視された内容が神話や昔話や伝承となって表現されたのです。ですから本当に古い神話、昔話、伝説の方が、それを
学問的に解釈した私たちの知識よりもはるかに叡智と心理を含んでいるのです。
そのようにかつての人びとは見霊能力を持っていたのですが、その能力は時代と共に諸民族の中から失われていきました。見
霊能力の消失と物質界に限られた意識の出現とは、さまざまな民族の場合、さまざまな時代に生じました。
人間の魂と霊界との生きた交流は、第四文化期に当たるギリシア=ラテン期に終わりを告げました。そして私たちの時代になっ
て完全に消えてしまいました。今日の人びとには、意識的に人間の魂と霊界との結びつきを求めようとする機会が残されている
だけです。古代の人びとは、自分の魂が物質界の諸事象を知っているだけでなく、たとえば霊的ヒエラルキアが直接自分の魂
の中に生きているのを知っていました。霊界は人間の魂という道具を使って物質界に作用を及ぼしていました。人びとは、その
ようにして自分が霊界のヒエラルキアの存在たちと結びついていることを知っていました。(P15-P17)
境域の守護霊
睡眠中、肉体とエーテル体から離れた魂たちは、しばしば境域の守護霊のところへ至ります。霊界と現界との境域を守護するこ
の霊は、人類進化の過程で、いろいろな仕方で人間の意識の前に立ち現れました。その最も重要なメッセージは、歴史的事実
としてではなく、伝説、伝承として伝えられてきました。ですから伝説、伝承は、昔、あれこれの人物が境域の守護霊とどのよう
な出会い方をしたのか、どのように境域の守護霊から伝授を受けたのか、どのように霊界へ参入し、そこからふたたび物質界へ
戻ったのかを示唆しています。
事実、正しい霊界参入は、物質界に戻ったあとの参入者が実際的で思慮に富んだ人物となって、両足でしっかり大地に立つこ
とを可能にしてくれました。参入者を夢想家、夢想的な神秘家にしたのではないのです。
境域の守護霊は、このことを数千年にわたって、求めてきました。しかし、19世紀の後半になると、覚醒状態で境域の守護霊と
出会った人はほとんどいなくなりました。しかし現代という時代は、全人類がなんらかの仕方で境域の守護霊に出会うという歴
史的な課題を与えられているので、眠っているとき、現代人の魂である自我とアストラル体は、境域の守護霊のところへ赴くの
です。
このことを現代人はイメージとして持っていなければなりません。厳しい境域の守護霊を取り巻く眠っている人びとの魂の群れ
は、覚醒時にこの境域の守護霊に近寄る力を持っていませんので、眠っている間にその側に行くのです。
そのときの様子を見てみますと、そのときに人びとは、「大きな責任の芽生え」とも言うべき思いを受け取っています。睡眠中、
境域の守護霊に近寄る魂たちは、覚醒意識にとっては知ることのできない意識で、霊界へ入る許可を、境域を超えて進むことを
求めます。そして数限りない場合に、境域の守護霊の厳しい声を聞かされます。----「今のお前の進化段階では、境域を超え
ることは許されない。霊界には入れない。下がりなさい」。
なぜそうなのでしょうか。もしも境域の守護霊がこの魂にすぐ霊界参入を許し、境域を超えて進ませたなら、その魂は現代の学
校、現代の教養、現代の文明の提供する諸概念、つまりほぼ6歳から死ぬまで抱き続ける諸概念を持ったまま霊界へ入ってい
くでしょう。
この概念、理念を抱いたまま霊界へ入っていくなら、その魂は麻痺させられてしまい、物質界に戻ったとき、思考内容の空虚
な、無思想状態になっていることでしょう。境域の守護霊が現代人の多くの魂を厳しく退けなかったら、ふたたび地上で目覚めた
とき、こう感じるでしょう。----「思考が働かない。考えが脳に作用できない。何も考えずに生きていかなければならない」。
現代人がすべてをそこに結びつける、「抽象理念の世界」は、そういう性質のものなのです。その理念を抱いて、霊界へ入ること
はできても、ふたたびその理念を持ってそこから出てくることはできないのです。実際、思いもかけぬほどに多くの現代人の魂が
睡眠中に体験しているこの情景を見ると、次のように言わざるをえません。----「この魂たちが睡眠中に体験していることを、死
後にも体験しないですむように、この魂たちを護ることができたらいいのに」。
人間の魂は、死の門を通って霊界へ赴きますが、次に地上に生まれてくるとき、ふたたび同じ理念の力を伴ってくることはでき
ないでしょう。なぜなら、現代人の思想を持って霊界に入ることができても、同じ思想を持ってふたたび出てくることはできないの
ですから。魂を麻痺させられて出てくるしかないのです。(P338-P341)

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