神秘学概論
人間の存在形式の変容
人間は、かつて、いまとはべつの存在形式から、いまのような存在形式に移行してきたのであり、将来、べつの存在形式に移っ
ていくだろう。(P120)
境域の小監視者と大監視者
インテュイションの体験を得ると、修行者は魂的−霊的世界のイメージを知り、その関係を「隠された文字」のなかに読むことが
できるだけでなく、人間が属する世界を共同作業によって成立させた存在たちそのものを認識するにいたる。そのことをとおして
修行者は、自分が霊的存在として魂的−霊的世界のなかで有する形姿において自分を知る。修行者は自分の高次の自我を知
覚し、自分のドッペルゲンガー、「境域の監視者」を支配するために修行しなければならないことに気づく。
修行者は「境域の大監視者」にも出会う。この存在は修行者がたゆまず先に進むことを要求する。この「境域の大監視者」は、
修行者が努力目標とすべき模範になる。そのような感情が修行者のなかに現れたなら、修行者はだれが「境域の大監視者」と
して自分のまえに立っているのかを認識する可能性を得る。いまや、この監視者は姿を変える。修行者はこの監視者を、キリス
トの姿で知覚する。修行者は、キリストの名に結びついた崇高な秘密に参入する。キリストが「地球の人間の偉大な模範」とし
て、修行者に現れるのである。(P368-P369)
聖杯の秘儀参入者
キリスト教が、大部分の人間が超感覚的な認識力を発展させていなかった時代に広まったのは地球進化の意味に適合したこと
だった。だから、当時は伝承の持っている力が非常に大きなものだったのである。自分では超感覚的世界を見ることのできない
人々に超感覚的世界を信頼させるには強大な力が必要だった。13世紀における短い例外的な時期を除いて、つねに、イマジ
ネーション、インスピレーション、インテュイションをとおして高次の世界に高まることのできる人々が存在した。これらの人々は、
密儀の知の指導者であり仲間である古代の秘儀参入者たちの後継者であった。彼らは、古代の密儀の認識をとおして把握す
ることのできるものを、自分たちの能力をとおして再認識するという課題を持っていた。そして、彼らはそれに、キリスト事件の本
質についての認識を付け加えた。
こうして、新しい秘儀参入者たちに、古代の秘儀参入の対象のすべてを含む認識が生じた。その認識の中心には、キリスト事件
の秘密についての高次の知が輝いていた。人間の心魂が第四時空に悟性と感情の力を強めるべきであったあいだ、そのような
認識はわずかに通常の生活のなかに流れ込むことができただけであった。だから、それは当時は「隠された知識」であった。つ
いで、第五時空が到来した。
第五時空の本質は、悟性の能力を発展させて、力強く開花させ、現在から未来へと発展させていくことにある。12世紀、13世
紀から第五時空はゆっくりと準備され、16世紀から現在まで発展を早めてきた。このような影響の下に、第五時空の進化にお
いては、悟性の力の育成が重要視され、反対に、かつて信頼されていた知識、伝承されてきた認識が人間の心魂に与える力
が失われていった。しかし、そのかわりに、近代の超感覚的意識の認識が人間の心魂に流入していった。たとえ最初のうちは
気づかれないとしても、「隠れた知識」が第五時空の人間の表象方法のなかに流れ込んでいった。現在にいたるまで、悟性の
力がこの認識に対して拒絶的な態度を取ってきたのは自明のことである。ただ、生じるべきことは、一時的な拒否にもかかわら
ず、生じるものである。
人類がしだいに把握していく「隠れた知」を、象徴的に「聖杯」の認識と呼ぶことができる。物語や伝説に語られている聖杯の深
い意味を理解することを学んだ者は、キリストの秘密を中心とする近代の秘儀参入の認識の本質を聖杯というイメージがよく象
徴していることを認めるであろう。だから、近代の秘儀参入者たちは、「聖杯の秘儀参入者」とも呼ばれうる。
人類が進化して、聖杯の認識を吸収するにつれて、キリスト事件をとおして与えられた衝動はますます意味深いものになってい
く。キリスト教の外的な発展に、内的な発展が結びついていく。イマジネーション、インスピレーション、インテュイションをとおし
て、キリストの秘密との結びつきにおいて認識されうるものが、人間の表象生活、感情生活、意志生活にますます浸透してい
く。「聖杯の隠れた知」が開示される。その知は内的な力として人間の人生にますます浸透していく。
第五時空をとおして、超感覚的世界の認識が人間の意識に流れ込んでいく。第六時空がはじまると、かつて漠然とした形で存
在した非感覚的観照が、より高次の段階でふたたび獲得される。かつてとはまったく異なった形で、新たに獲得されるのであ
る。かつて人々の心魂が高次の世界について知っていたことは、みずからの悟性と感情の力に浸透されていなかった。彼らは
霊感として、高次の世界に関することがらを知っていたのである。将来、人間はそのようなことがらをたんに霊感として受け取る
のではなく、その霊感を把握し、それをみずからの固有の存在の本質として感じ取るであろう。
(P378-P381)
月と地球の結合
地球のさらなる進化を可能にするために、レムリア時代に地球から離れなければならなかった諸力と諸存在が、ふたたび地球と
合体できるまでに、地球と人類の進化が進む時が来る。月がふたたび地球と結びつく。十分多くの人間の魂が、この月の力を
地球のさらなる進化に実りをもたらすものにすることのできる内的な力を持つようになるので、月は地球に結びつくのである。高
次の進化に到達した多数の人間の魂のかたわらに、悪の方向に進む人間の魂が現れる時がくるだろう。進化から遅れる魂たち
は、カルマのなかにあまりにも多くの誤謬、憎しみ、悪を蓄積し、善良な人々の共同体に鋭く対抗する悪と迷妄の連合を形成す
るだろう。
善良な人類は、みずからの進化をとおして月の力を使用することができるようになり、悪の部分が特別の地球領域としてさらな
る進化をともに歩んでいけるように、悪の部分を改造する。(P383-P384)
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