シュタイナー自伝



 唯物論に屈したニーチェ

ニーチェが彼なりの方法で霊の世界を目指す営みを続けながら、結局は自然科学的な自然観に捕捉されていたことは、当時の
私には明白だった。それ故、私は彼の永劫回帰の思想に潜む神秘的解釈を厳しく拒んでいた。私はペーター・ガストの説に同
意する。ペーター・ガストは彼の編集したニーチェ全集に、次のように書いている。「ニーチェの永劫回帰の思想は、純機械論的
に解釈すべき有限性に関する理論であり、したがって宇宙の分子結合の反復性に関する理論である。」----ニーチェは自然の
原理から高邁な思想を導き出さねばならないと考えていた。これが彼の、同時代を病弊とする苦闘のあり方であった。このよう
に、19世紀末の自然観が原因となり----霊へ眼差しを向けながらも----苦悩を背負わざるをえなかった人間の苦悩が、189
6年当時の私の眼前に、ニーチェの魂の像となって現れたのである。(シュタイナー自伝U)
(関連ページ) カルマの形成-ニーチェ-フランシスコ界修道士 ・ニーチェの精神遍歴  魂の隠れた深み-霊界からワーグナーがニ
ーチェのために試みたこと