芸術と美学






7度、5度、3度


人類の歴史を遡っていくと、アトランティス時代に至ることはご存じのことと思います。アトランティス時代の人間は本能的な霊視
力を有していて、白昼夢の中で感覚的なものの背後に霊的なものを見ました。このように、人間が本能的な霊視力によって感覚
的なものの背後に霊的なものを見ていた時代には、音楽に対する感覚も現在とは異なっていました。古代の人間は音楽を聴く
とき、体から抜け出るように感じました。特に7度の音程を古代人は好みました。7度の音程によって音楽を作り、歌を歌いまし
た。今日の人間には音楽的とは感じられないものです。しかし、古代人は7度の音程を聴くことによって、人間界から神界へと上
昇するのを感じたのです。

やがて、時が流れて、7度の音程に変わって、5度の音程が好まれる時代がやってきました。5度の音程を聴くことによって、音
楽によって自分の中の神的なものが物質的なものから解放されるのを感じました。しかし、7度の音程によって完全に霊的なも
のの中に入り込むのを感じたのに対し、5度の音程によっては物質的なものの境界にまでしか至りませんでした。霊的なものを
まさに皮膚の感覚の境界で感じたのです。このような感情を今日の人間は通常の意識においては持ちえません。

つぎに、音楽史からも明らかなように、3度の時代がやってきます。長3度と短3度の時代です。3度の時代とは、音楽が人間を霊
的なものへと飛翔させるものから、人間の中に完全に入り込んだことを意味しています。長3度と短3度、そして、そのことによっ
て規定される長調、短調は音楽を人間の中へと入り込ませます。5度の時代から3度の時代へと移行することによって、人間は
音楽をまったく内的に、皮膚の中で体験するようになりました。

つまり空間遠近法と3度の音程を中心にした音楽が同時に現れたのです。空間遠近法は、絵画的に空間に出ていこうとするも
のです。3度の音程は、人間のエーテル体と肉体の中に入り込むものです。どちらも自然主義的な方向です。空間遠近法は外
的自然主義であり、3度の音程は内的、人間的な自然主義です。事物の真の本質を把握すると、宇宙に対する人間の位置につ
いての認識に至ります。音楽においても、つぎの段階は霊化です。個々の音の特性を知るようになるのです。ある音がハーモニ
ーやメロディーの中で、他の音と共同して音楽の秘密を明かすのではなく、また、個々の音を他の音との関係において平面的に
認識するのではなくて、個々の音の中に入り込んで、その深さの次元を把握するのです。(P36-P38)
(関連ページ)  音楽の本質と人間の音体験-オクターヴ感覚