メルヘン論




見えない友だち

子どもの心情は----これは経験や体験が教えてくれることですが----しばしば自分の内面に、素朴な仲間のような何かを生
み出すことがあります。この仲間は、実際はその子どもの心情にとってしか存在していないのですが、その子どもに付き添って、
人生のさまざまな出来事をいっしょに体験します。眼に見えない友だちを携えて生活している子どもたちに、心当たりのない人は
いないでしょう。眼に見えない友だち、彼らについてはこのように考えなければなりません。子どもたちが喜ぶような何かが起き
るとき、彼らはそこに立ちあっています。子どもが何らかの体験をするとき、彼らは眼に見えない霊の仲間、魂の仲間としてそこ
に参加しているはずなのです。「分別のある」大人は子どもがそのような魂の仲間をもっているのを聞きつけると、子どもにそん
な仲間は持たないように説教しようとし、そうすることが子どものためだとさえ考えます。しかし、それが子どもの心情をどれほど
傷つけることになるか、人は実際の経験を通してしばしば思い知らされます。その子どもが霊的=魂的な気分に対して敏感であ
れば、この悲しみはそれ以上のものを意味します。子どもが病的になり、衰弱することを意味する場合もあるのです。これは人間
の魂の深い内的な出来事と関連する、まったく現実の体験です。

グリム兄弟が伝えている子どもとひきがえるのメルヘンには、この体験がそのまま現れています。(P22-P23)

(関連ページ) 治療教育講義-小さな霊と話す子供