医学は霊学から何を得ることができるか




癌はまちがった場所に感覚器官を形成しようとする傾向である

すでに述べたように代謝四肢系においては、神経感覚系において行われているプロセスとは正反対のプロセスが行われていま
す。ところが、次のようなことが起こることがあります。すなわち、元来は神経感覚プロセスであるプロセス----たとえば頭部の
神経において行われており、そこで行われているかぎりは「正常」であるようなプロセス----が代謝四肢系の、いわば住所変更
をすることがあるのです。つまり、神経感覚系において行われていれば、「正常」であるようなプロセスが、アストラル体と自我の
異常のために、代謝四肢系において行われるのです。すなわち、ある系にとっては適切であるものが、別の系においては変性
を惹き起こし、病気を生み出すことがあるのです。

たとえば神経感覚系に特有のプロセスが別の系に現れた場合、それは病気のプロセスになります。その一例が腸チフスです。
腸チフスは神経系に特有のプロセスです。このプロセスは肉体のなかの神経系においてその役割を果たすことになっているの
ですが、実際にはエーテル体のなかの代謝系において活動を始め、しだいに肉体に影響を及ぼすようになって腸チフスとなるの
です。ここにおいて私たちは、発病ということの本質を見ることができます。

また次のような発病の仕方もあります。ある感覚器官において活動している原動力もしくは力が、まちがった場所で活動するこ
とがあるのです。ある感覚器官において働いているものがなぜか変性をきたし、別の場所で働くことがあるのです。ここで耳の
働きを取り上げてみます。その働きが神経感覚系にとどまらないで、別の場所に刻印づけられることがあります。

たとえば、それが代謝系のなかのある場所----代謝系がリズム系と結びついているような場所----に刻印づけられます。そう
すると、感覚器官を作ろうとする傾向がまちがった場所に生じることになります。これが癌と言われるものなのです。人間の有機
体をこのように洞察することによってはじめて、癌はまちがった場所に感覚器官を形成しようとする傾向であることが分かるので
す。(P68-P69)


神経感覚系が代謝四肢系のなかに入りこみ、そこで力を発揮すると癌が生じる

神経感覚系において自我とアストラル体が強くなりすぎると、神経感覚系はなぜか代謝四肢系の方に追いやられます。このこと
はいろいろなかたちで起こりますが、結果として生じるのは「腫瘍形成」という言葉で総称されるものです。自我もしくはアストラ
ル体の活動が活発になりすぎると神経感覚系は他の系に追いやられる、というこの事実を知ったとき、私たちは腫瘍形成の本
質を理解することができるのです。

神経感覚系が代謝四肢系のある箇所で活動し始め、恐るべき結果をもたらす場合があります。それはほかならぬ、癌です。癌
は、神経感覚系が代謝四肢系のなかに入りこみ、そこで力を発揮した例のひとつです。前回の講演において私は、まちがった
場所に感覚器官が形成される場合があることを述べ、代謝四肢系に感覚器官が形成される場合を例としてあげました。

耳は、それが正しい場所に形成されているかぎりは正常です。が、耳の形成にしろ他の感覚器官の形成にしろ、それが----ほ
んの少しでも----まちがった場所に起こるなら、それはまさしく癌腫形成なのです。私たちは、まちがった場所に感覚器官が形
成されようとするこの傾向を押さえなくてはなりませんが、そのためには、世界と人間の進化全般についての深い理解が必要で
す。(P94-P95)