こころの不思議





体の痛み

簡単な形態の痛みから出発しましょう。指を切るか、手を挫傷して痛みを感じるのが、最も単純な痛みでしょう。ここから考察を始
めましょう。

現代の心理学者に、この簡単な痛みを説明してもらうと、おもしろいでしょう。嗅覚・視覚・聴覚のほかに「苦痛感覚」がある、と
彼らは発見したのです。人間はこの感覚で痛みを知覚するというのです。目が光を知覚し、耳が音を知覚するのと同じです。「苦
痛感覚があるから、人間は痛みを感じるのだ」と、彼らは言います。

私たちの経験からは、苦痛感覚の存在が認められる根拠が見出せません。それにも関わらず、純粋に観察に基づく科学は、苦
痛感覚を認めつづけています。科学は苦痛感覚というものをでっちあげたのです。しかし、このことには立ち入らないで、「どのよ
うに、この簡単な形の痛みは発生するのか。指を切ると、どのようにして痛みを感じるのか」と問うことにしましょう。

指は物質的身体の一部です。指のなかには、物質界の素材があります。指は身体のエーテル的部分・アストラル的部分に貫
かれています。エーテル的部分・アストラル的部分には、どのような課題があるのでしょう。

炭素・水素・酸素・窒素などからなる指の細胞の背後には、それを構築するエーテル体があります。エーテル体が細胞を集めて
指にしており、細胞をいまの結合状態に保っています。エーテル体が指に浸透しています。エーテル体は、指が腐敗しないよう
にしています。エーテル体は物質的な指と同じ場所にあります。

アストラル指もあります。指が押されるのを感じたり、何かを知覚するとき、その知覚を仲介するのは指のアストラル体です。感
受はアストラル体のなかにあるからです。

物質的な指、エーテル的な指、アストラル的な指は、単に機械的に関連しているのではありません。これらのあいだには生命的
な関連があります。エーテル的な指は、物質的な指を熱し、力づけます。エーテル体は、内面の形成にも絶えず働きかけます。
エーテル的な指は、物質的な指にどう関わっているのでしょう。エーテル体は、物質的な指の細部にいたるまで、正しい位置、
正しい関係にもたらします。

さて、皮膚に擦り傷をし、負傷したとしましょう。エーテル体が指を正しく整えるのを、この傷が妨げます。エーテル体は指に浸透
して、全体をまとめていなくてはなりません。傷によって指の各部が分離されると、エーテル指は行うべきことを行えなくなりま
す。たとえば、庭仕事をするために何らかの道具を用意する必要があるときに、だれかがその道具を壊したようなものです。そう
なると、自分のしたい仕事ができません。着手したいことを中止するしかありません。欠落ゆえに、介入が不可能になります。こ
の把握不可能を、指のアストラル部分は痛みと感じるのです。

手を損傷すると、物質的な手のみが損傷されたのであって、エーテル手は損傷されません。しかし、エーテル手は働けなくなり
ます。この欠落を、アストラル手は痛みと感じます。私たちはエーテル体とアストラル体との関係をとおして、最も単純な痛みを
知りました。実際に、このようにして痛みは起こります。アストラル体がもはや活動を遂行しないことに慣れるまで、痛みは続き
ます。(P34-P36)