歴史のなかのカルマ的関連




敵同士だったマルクスとエンゲルス 
 
八世紀、九世紀に今日のフランス北東部で起こった出来事に目を向けてみましょう。そこでは、つぎのような出来事が生じまし
た。当時は、まだ大国家が建設されていませんでした。ですから、これからお話しすることは、比較的小さな人間社会のなかで
起こったことです。

今日のフランス北東部に、エネルギッシュな性格によって大きな財産、地所を所有した人物がいました。この男は非常に秩序だ
った方法、当時としては非常に組織的な方法で、財産、地所を管理していました。彼は、自分のしたいことを知っていました。彼
のなかでは、目的を意識している人間と冒険家が奇妙に混ざり合っていました。彼は自分の財産で兵士を雇って、小規模な出
兵をしました。その小さな軍隊はさまざまな分捕りをしました。

彼はその軍人たちと、フランス北東部から行進しました。彼が留守のあいだに、彼よりは冒険家ではないけれどエネルギッシュ
なべつの人物が、彼の所領と全財産を乗っ取ったのです。彼には身寄りがありませんでした。帰ってくると、ほかの人物が自分
の領地を乗っ取っているのを見出しました。新しい所有者は彼よりも強く、たくさんの兵士をかかえていました。彼は新しい所有
者にはかないませんでした。

当時は、自分の故郷でうまくいかなければ、すぐに見知らぬ土地移るというふうにはなされませんでした。たしかに、この人物は
冒険家でした。しかし、彼には交戦するだけの力がなく、支持者たちとともに、かつての自分の所領地で農奴になりました。彼
は財産を奪われ、彼とともに冒険に出た者たちとともに農奴として働かねばならなくなったのです。

かつて領主であった者が農奴なると、とくに権力に対して批判的な見解を抱くようになります。彼らはこの樹木の生い茂った地
方で、夜になると集まって火を焚き、領土を奪い取った者に対する陰謀がめぐらされました。

領主から農奴になった当該の人物は、仕事の時間以外の余生を、いかにして領土と財産を取り戻すかの計画を練ることに費や
しました。彼は、自分の領土を強奪した者を憎みました。

この二人の人物は死の扉をくぐり、死と再受肉のあいだに霊的世界で、その時以来ともにおこないえたことをすべておこない、十
九世紀に再受肉しました。全財産を失い、農奴となった人物は、近代社会主義の樹立者カール・マルクスとして再受肉しまし
た。彼の領土を奪い取った人物は、彼の友人フリードリッヒ・エンゲルスとして生まれ変わりました。死から再受肉への長い道程
のあいだに、彼らのかつての行為の均衡を取るための衝動が刻印づけられました。

マルクスとエンゲルスがおこなったことを知り、カール・マルクスの独自の思想を研究して、いまお話しした八世紀、九世紀にお
ける人物たちの行動と結びつけてみてください。そうすると、マルクスとエンゲルスの文章に新しい光をあてられます。歴史にお
いては、ものごとがどのように関連しているかを抽象的に語るのではなく、人間がかつて体験したことがらが、まったく異なったも
ののように思えても、じつは類似点があるものとして、つぎの人生にもたらされるのが見出されます。

八世紀、九世紀に森で火を焚いて人々が語り合った口調と、ヘーゲルが活動し、弁証法が成立した十九世紀に語られる文体と
は異なっています。九世紀のフランス北東部の森を思い浮かべてみてください。共謀者たちは、当時の言葉で悪態をつき、罵り
ました。その言葉を十九世紀の数学的−弁証法的な言語に翻訳すると、マルクスとエンゲルスの文章になります。