血はまったく特製のジュースだ




人種・民族の混血

歴史を遡っていくと、地上のどの民族の場合にも正確にそれと指摘することのできる、或る決定的な時点が存在する。それは古
い伝統が生命を失い、家系の血を通して生きてきた根源的叡智が消え、民族が新しい文化段階に入っていった時点である。ど
の民族もこの転換期を意識しており、それを古い伝説の中で記念している。

それまで部族たちは閉鎖的に生きていた。同一の血族同士の間で結婚することが当然であった。この習慣はどの人種、民族の
中にも見られた。人類にとって決定的な時点とは、この原則が崩れ、別の血が別の血と混じり、同族婚が異族婚に移行した時
点である。同族婚は家系の血を保持し、代々、部族、民族の流れてきた同じ血を個々の成員の中に伝える。異族婚による新し
い血の混入は、種族のこれまでの生活原則を崩壊させる。どの民族の中にも、遅かれ早かれ、現れてくるこの異族婚による混
血のはじまりこそ、理性もしくは外的知性の誕生を人類にもたらした時点なのである。

太古には一種の薄明るい見霊能力が存在しており、そこから神話、伝説が生じたこと、そしてこの見霊的意識は、丁度混血が
現在の明るい意識を生んだように、同族の血を純粋に保つことによってはじめて可能であった、このことは神秘学にとって計り難
いくらいに重要な事実である。

論理的思考が異族婚とともに発展したということは、今のところまだ奇異な主張にとどまっているが、やがて科学的にも実証さ
れるようになるだろう。その端緒はすでに作られている。異族婚によって生じた混血は、それまでの見霊能力を失わせたが、そ
の代わり、人類の意識を更に一段と高い発展段階へ引き上げた。今日の覚醒時の日常意識はこの古い見霊意識から発展して
きたのである。しかし今日われわれはこの発展段階をふたたび引き上げて、祖先返りするのではなく、かつての見霊能力を新し
い形式の中に復活させようと努めている。(P86-P87)