自由の哲学




皮を被った現代の唯物論

近頃よく耳にするのは、19世紀の唯物論にはすでに学問的に決着がつけられている、という言葉である。しかしそんなことはま
ったくない。現代人の多くは、物質にしか適用できない概念を使用しながら、そのことに気づいていない。皮を被った現代の唯物
論は、前世紀のむき出しの唯物論よりも、精神的な世界観に対して、より非寛容な態度をとっている。自然科学が「唯物論をとっ
くの昔に見棄てている」のだから、精神的なものを志向する世界観をわざわざ認める必要はない、と多くの人たちを思い込ませ
ているのも、この皮を被った唯物論なのである。(P205)